イヌイット民族とは?家や食事・服装は?エスキモーやアイヌとの違いは何?イヌイットは世界の民族の中でも有名な民族ですので、聞いたことある方も多いのではないでしょうか?今回はイヌイットの家や食事・服装といった衣食住に加え、居住地や言語・エスキモーやアイヌ民族との違いも紹介します!
目次
イヌイット民族とは?エスキモーとの違いは何?
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極北の氷雪地帯であるカナダ北部一帯、アメリカ合衆国アラスカ州、グリーンランドを居住地とする先住民のことをいいます。
イヌイット民族は、エスキモー系民族の1つで、エスキモー最大の民族といわれているのですが、実は「エスキモー」という呼び名は、カナダとグリーンランドに住むエスキモー民族から拒否されています。
彼らエスキモー民族が「エスキモー」という呼称を拒否する理由は、エスキモーの語源が原因です。
アラスカでは「エスキモー」は「かんじきの網を編む」という語源だったのですが、カナダでは「生肉を食べる者」と誤って解釈されたことで、『野蛮』という偏見による蔑称(差別用語)になってしまったからです。
そのため、蔑称を避けるために「イヌイット」という呼称が使われるようになりました。
しかし、実は「イヌイット」という呼称はあくまでカナダに限定して使われている呼び名で、グリーンランドの地元では「カラーリット」という呼称で使われることがあるんですよ。
イヌイット民族の人口は?
民族の中には、人口が少ないことから少数民族と呼ばれる民族がいるのですが、イヌイット民族もその少数民族にあたります。
少数民族にあたるイヌイット民族の人口は10万人程度といわれています。
この『10万人』という人口の規模を、日本で例えると、政令指定都市が法定人口が50万人以上であることが条件となりますので、日本の政令都市未満のいわゆる『地方の市区町村規模だと思っていただければイメージがつきやすいかと思います!
イヌイット民族の言語は?
多くの民族は自分たちの特有の言語をもっており、イヌイット民族も例外ではありません。
イヌイット民族は、イヌクティトゥット語と呼ばれる言語を話します。
この『イヌクティトッット言語』ですが、どんな言語なのか皆さん想像できますか?カナダ北部一帯ということで、アルファベットを扱うのではないかと想像する方が多いかもしれませんね。
でもイヌクティトッット語は、実はアルファベットは使われません。
イヌクティトゥット語は、『アブギダ』というシンボルが使われる言語なのです。
▼アブギダ▼
イヌクティトゥット語で面白いのは、たった1つのシンボルで英語の一文に相当する内容を言えてしまうことです。
これを聞いたときは衝撃でした…、極寒なので、長く話さずとも伝わるように考えられたのでしょうかね(笑)
ただ、残念なことに、現在イヌクティトゥット語を話すことができるのは3万人程度とのことです。「もうすぐ消えてしまうのではないか?」と噂されている言語のひとつです。
日本でも地方の方言は高齢者同士しか聞き取れないといいますよね。若者が使わなくなることで、このイヌクティトゥット語にように日本の方言も少しづつ失われていくのかもしれませんね…。
イヌイット民族の寿命は短い?
平均寿命は、先進国や発展途上国など、居住地によって大きく異なりますが、民族によっても差があります。
先住民であるイヌイット民族の寿命は、非先住民の平均寿命の17年短いと、2010年の国連報告書で発表されました。
国連報告書は、ブラジル、南アフリカ、コロンビア、米国、オーストラリア、メキシコといった先住民人口が多い国々において同時に発表されました。
その国連報告書によれば、貧困や栄養不良による感染症が要因で、先住民の寿命を縮めていると指摘されています。
医療、食生活など、日本含め先進国の寿命が伸ばしてきた大きな要因となるものが、先住民には行き届いていないということですね。
国連報告書では、併せて先住民の権利(経済・社会・文化等)がいまだに限定されていることが強調されており、先住民にたびたび行われている暴力、同化政策、先住民の土地の搾取や立ち退きの強制、先住民が劣悪な衛生状況に置かれていることなどの言及まで至っています。
イヌイット民族が住む家は『イグルー』と『カルマク』の2種類
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民族の代表的な特徴としては、挙げられるのは『住む家』です。
極寒地帯に住むイヌイット民族も例外ではなく、住んでいる家には大きな特徴があります。
イヌイット民族は、私たち日本人と大きく異なり、居住地には木材がないため、木材を材料に家を建設することができず、また、遊牧民であることから、常に移動できる家を用意する必要がありました。
そのような環境下において、先住民イヌイット民族の住む家は以下の2種類の住居です。
●イグルーの特徴(冬用)
氷と雪を使って作るドーム状の家です。日本でいう『かまくら』に近い雪の家です。
●カルマクの特徴(夏用)
クジラの骨や木くずなどによるテント状の構造物をアザラシの皮やトナカイで覆った家です。
イヌイット民族の生活様式から、彼らはあくまで『寒さに耐えうる家』かつ『簡易に取り壊せる構造をした家』を建築し住む必要があるわけですね。
イヌイット民族の食事は『肉食』が中心
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住居(家)に続き、民族の特徴として挙げれらるのは『食事』です。
イヌイット民族の食事は、住んでいる環境から想像がつくとおり、農耕は不可能であるため、動物資源を狩猟や捕獲することでしか生き抜くすべがありません。
そのため、イヌイット民族の食事は『肉食』が中心です。
トナカイや海鳥を狩猟することもありますが、イヌイット民族は海の生物を捕獲する技術に長けていたため、主食は以下の動物になります。
・イッカク
・アザラシ
・カワウソ
・クジラ
・セイウチ
・アシカ
狩猟・捕獲した後の肉は、アクタックという脂肪とベリーのアイスクリームに加工して食べます。
また、イヌイット民族の特徴としては、狩猟・捕獲し食する際に、動物のほとんどを使い切る点が挙げられ、例えば、捕獲したクジラの歯を削ることで、装飾品や道具にするケースがあります。
他にも動物の皮や毛皮は伝統的なイヌイット民族の衣装にも使われています。
動物の肉以外では、植物性のものとして夏場のクラウドベリー(キイチゴ)やヤナギランを食しています。
イヌイット民族の衣服・衣装は『世界一の防寒具』
先述したとおり、イヌイット民族は極寒の気候の中で暮らしています。
それこそ気温はマイナス30度~40度です。当然、私たちが日本で着ているような衣服(衣装)では耐えられませんよね?
この寒さを防ぐためイヌイット民族は、狩猟・捕獲した動物の毛皮を材料に、とても暖かい衣服(衣装)を着ています。
ただし、動物と一言でいっても、用途に応じて様々な動物の毛皮が選ばれています。
例えば、
●重たいがとても暖かいホッキョクグマの毛皮
⇒ハンターの衣服(衣装)として採用
●軽くて暖かいカリブーの皮
⇒赤ちゃんの衣服(衣装)として採用
●防水できるアザラシ皮
⇒ブーツとして採用
といった具合です。
また、アウターコートは、顔を出す部分と袖口以外には隙間がないように作られ、さらに大きめにつくることで、服と身体との間に暖かい空気の層ができ、保温の働きを持ちます。
このように寒さを凌ぐために作られたイヌイット民族の冬服は、『世界で最も優れた防寒着』と言われています。
ヨーロッパから来た初期の探検家の多くは、エスキモーが太っているという記録を残しています。
実際は、先述したとおり、防寒の観点で敢えて大きめに作っていたので、太って見えていただけというわけですね。
イヌイット民族の宗教は『アニミズム』
日本は無宗教の人も多いですが、世界の国々では無宗教の人の方が圧倒的に少ないほど、宗教は身近なものとされます。
イヌイット民族にとっても宗教はとても大切なものです。
イヌイット民族はアニミズムを信仰しており、魂が死ぬとその後も別の世界(霊の世界)で魂は生き続けると信じています。
アニミズムとは、動物、植物、山河、岩、風、雨など自然界の全てに霊魂や精霊が宿っているとする考え方をいいます。
イヌイット民族のお風呂は温泉(豆知識1)
日本では当たり前に入るお風呂ですが、実は海外では当たり前ではありません。シャワーだけの国や水浴びだけの国も沢山あります。
イヌイット民族のお風呂事情ですが、どうやら今は温泉に入っているようです。
過去、サウナのように部屋の中で焚き火をしてその熱で汗をかくことでお風呂の役割を果たしていたとか。
また、この地域の水はとても貴重なものです。そのため、氷を尿で溶かした「尿風呂」に入ってた時代もあるんですよ!
イヌイット民族と日本人の祖先は共通(豆知識2)
数千年前にアジアから北アメリカにやってきたという経緯を持つイヌイット民族は、日本人と外見が似ていることからも日本人にとって親しみやすい民族です。
それこそ、『イヌイットと日本人の祖先は共通』という研究があるほど。
日本人と同じモンゴロイドという人種に分類されており、大昔の遠い親戚というぐらいに思っておくとちょうどよいと思います。
ちなみに、イヌイット民族(エスキモー)は新モンゴロイド、アイヌや大和民族や沖縄人は古モンゴロイドにあたるんです!同じモンゴロイドでも違いがあるんですよ。