トゥアレグ族とは?食事や結婚文化は?エルメスの由来となった民族!?サハラ砂漠で有名な西アフリカのニジェール共和国。様々な民族が共存しそれぞれ独自の文化があります。今回はトゥアレグ族の食事や結婚文化などを紹介!エルメスやフォルクスワーゲンの製品の由来となった民族って本当?
独特な美しい青の衣装を身にまとうトゥアレグ民族は、一時期ブログやテレビで有名になったことや、アクセサリーや車が好きな人は名前だけ知っているという人もいるでしょう。
しかし、日本ではその暮らしや歴史についてあまり知られていません。トゥアレグ族の暮らしについてご紹介します。
目次
トゥアレグ族ってどこの民族?
北アフリカのマリ、アルジェリア、ブルキナファソ、リビアなど、サハラ砂漠にあるいくつかの国に存在しています。
ベルベル系の民族で、男性の青いターバンと民族衣装から【青衣の人】や【青の民】とも呼ばれます。
【トゥアレグ】という呼び名はアラブ人によって〈神に見捨てられた者〉という意味で付けられましたが、
自身では【ケル・タマシェク】(タマシェク語を話す人)と呼んでいます。
ベルベル人とは
北アフリカに古くから住み、アラブ人が多数を占めるようになった今も一定の人口をもち、独自の文化をもつ先住民族です。
サハラ砂漠の南に位置するニジェールという国にトゥアレグ族が最も多く暮らしています。
サハラ砂漠は、アフリカ大陸北部に広がる世界最大の砂漠として知られ、その面積はアメリカ合衆国とほぼ同じの1,000万㎢もあり、アフリカ大陸の約三分の一を占めています。
砂漠と聞くと水辺が少なく、昼と夜の寒暖差が激しい過酷な環境というイメージがありますね。
トゥアレグ族の言語は?
言語はトゥアレグ語(タマシェク語)で、アラブ世界の少数民族で唯一、独自の文字を持ちます。
トゥアレグ族の独自の階級制度
かつては、ほかのベルベル人にはない独自の身分制度があり、階級によって、皮膚の色・生活・ラクダの乗り方などが分けられていました。
この制度は上流階級の混血が進まないために行われていたと言われています。
トゥアレグ族の階級は全部で3つあり、
【貴族】
イマシュクと呼ばれ、コーカソイドの特徴が強く、肌が白く背が高く細身。
男性は青い衣服を身につけ、他の集団との戦闘や略奪を行っていました。
【自由民】
イムカドと呼ばれ、ネグロイドの血の混じった人々で、男性は白いターバンを身につけていました。
【奴隷】
イムランと呼ばれ、トゥアレグ族に征服されたスーダン系黒人で貴族・自由民の所有する奴隷。農耕作業や家事労働を行っていました。
現在では、多くのトゥアレグ族が定住化したこともあり厳格な身分制度は取られていないようです。衣服の色も区別はなくなってきています。
トゥアレグ族の民族衣装
青の衣装は男性が着るもので、女性の服で青色は使われません。
男性はターバンと、トゥアレグブルーと呼ばれる鮮やかで美しい、藍染めの民族衣装ダラア(ガンドゥーアとも呼びます)を身に付けます。
ターバンの色はグループごとに分けられているため、黒色に近いものから緑がかったものまで多彩です。
女性の衣装は決まりがない
女性は緑や白や黒っぽい色など、鮮やかな青以外の色を使った衣装を身にまといます。
ただし、村の長老のみが青色以外の服を着ることを許されているといわれています。
男性が青いターバンで顔や身体を隠す一方、女性は皮膚を露出することもあったり、かなり女性に自由が与えられています。
トゥアレグのオシャレなアクセサリー
トゥアレグ族は高度な工芸技術を持っています。
彼らのアクセサリーは、出身地や身分をあらわす意味があり、精巧で独特なデザインのシルバーでできています。
特に砂漠でのコンパスとして利用されていたトゥアレグ・クロスというアクセサリーが有名で、ペンダントにされ父から子へと代々受け継がれ、出身地や名前など自分の身分をあらわすために使われています。
有名な高級ブランドのエルメスはトゥアレグ族が砂漠でコンパスにしているトゥアレグ・クロスのデザインから、フォルクス・ワーゲンが製造した車の【トゥアレグ】も、藍染の色の高価で高貴なことから、トゥアレグ族の衣装やアクセサリーのデザインからイメージされた製品が作られているのです。
世界が認めるオシャレな民族なんですね!
トゥアレグ族の住居
引用元:https://www.flickr.com
トゥアレグ族の住む場所・仕事・環境によって建てている家が大きく異なります。
半遊牧民のテント
農耕や遊牧を仕事とするトゥアレグ族は布を張った楕円状のテントや干し草で三角状にしたテントを建てて暮らしています。
各テントには住んでいる女性の名前を付けて住み分けをしています。
映える街並み
定住化したトゥアレグ族が住むガダミスは、リビアとアルジェリア、そしてチュニジアとの国境の交点近くにある世界遺産都市になっています。
ガダミスの旧市街は、石灰石で塗装した真っ白な家が並んでいるのが特徴です。
旧市街は全長約7kmの城壁で囲まれ、白い家と青い空がとても良く映え、
その美しさから、ガダミスは砂漠の真珠と呼ばれています。
ちなみに、白く塗装される理由は夏の厳しい暑さを乗り切るためです。
町の通りは土の屋根で覆われ、外の温度が40℃を超えても、通りは20℃ほどに保たれていてとても快適です。
また、ガダミスの前には貯水池があり、植物や作物を育てたり、水浴びに利用されています。
トゥアレグ族の食事
引用元:https://cdn.4travel.jp/img/tcs/t/pict/src/36/54/78/src_36547870.jpg?1418159609
トゥアレグ族の主な食べ物は穀物です。
また、牛や羊などの家畜も食べます。
その独自の食べ物について、いくつかご紹介します。
砂で作るパン
特に有名なのがタゲーラというパンです。
小麦を練って丸く平たい形を作った食べ物で
その調理法はなんと!
炭火で焼いた砂の下に埋めて焼くんです!
焼けたら砂をはらって、そのままいただきます。
味は少し塩味でミートソースを付けて食べます。
ラクダのヨーグルト
ラクダやヤギのミルクで作るヨーグルトで、アークと呼ばれています。
トゥアレグ族はたんぱく質を乳製品から摂っているので、貴重な栄養源なんですね!
ビールのような見た目のお茶
引用元:https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/31/ff165598fdc13ae750e6262d25aeef16.png
茶葉にはミントの葉や中国茶などが使われています。
2つのポットを使い、1番目のポットでお湯と茶葉を沸騰させ、2番目のポットに注ぎます。この中に大量の砂糖を加え、約50㎝の高さから、左右のポットへと注いでいきます。
砂糖を入れたお茶を5~10回繰り返すと、ビールのような泡がたっぷり浮かんだハチミツ状のお茶が出来上がります。
ものすごく甘そうですが、灼熱の砂漠に暮らす人々の水分・糖分の補給には欠かせないものだっだのでしょう。
トゥアレグ族の宗教
トゥアレグ族のほとんどはイスラム教です。
他にも精霊信仰もしており、砂漠の悪霊であるジンに関するおまじないも行います。
ジンとはアラブでは砂嵐を起こし、人間と動物の両方の姿に変身できる、人を誘惑する精霊といわれています。
トゥアレグ族は一妻多夫制ではなく、一夫一妻制。
イスラム世界でも女系社会でも、一夫一妻制というのは珍しいです。
ちなみにトゥアレグ族は女系社会で 女性の側が結婚相手を選ぶ権利があるといわれています。
トゥアレグ族の仕事の変化
トゥアレグ族は剣・盾・槍・ライフルなどの武器を用いて商人の集団の襲撃や警備を行なっていました。
脚の速い白いラクダに乗って現れ、商人を襲い、交易品に税をかけたり、略奪をしたりとサハラ砂漠では恐れられていました。
今ではそんな砂漠の冒険は行わず、ラクダ、ヤギ、羊、牛等を放牧して暮らしています。
一部の人はラクダで荷を積んだグループを組み、塩や家畜等を売って、中国茶・砂糖・衣服などを買い商売をしています。
近年は干ばつによって家畜を失い、定住化が進んでいるそうです。