チャム族の現在の生活とは?民族衣装や織物・民芸品が有名?舞踊の歴史も!ベトナム中部~南部にかけて独自の文化を有し、王国を建設した民族がありました。近代ではベトナムの支配を受けるようになりましたが、今も少数民族として暮らしています。今回は独自に発展したチャム族の暮らしや、伝統を大切にしてきた彼らを象徴する品をご紹介します!
チャム族とは?
ベトナムとカンボジアに暮らしている民族で、ベトナムの民族の中ではおよそ16万人と多い方です。
主に中南部の沿岸とメコンデルタ地方に暮らしており、
・中南部の沿岸に住む人→17世紀まで栄えたチャンパ王国の子孫で、ヒンドゥー教徒が多い。
・メコンデルタ地方の人→カンボジアから流入した民族で、イスラム教徒が多い
といわれています。
★チャム族の歴史★
チャム族は192年にチャンパ王国を設立し、
ベトナムの中部海岸~平野に長い間暮らしていましたが、
ベト族によって大幅に領土を縮小され、17世紀に滅亡しました。
今はその子孫達が残っているといわれています。
チャム族の家族のルール
チャム族の家族は母系制度で家や財産を守るのは女性の役目とされています。
結婚した後は、夫が妻の家に入るので、家の財産や妻の名字は女の子が受け継いでいくことになります。
チャム族の母系制度の特徴は
①子が母の名字を付けられる。
②娘たちは母と一緒に住む。また、末の娘が財産を受け継ぐ。
財産は娘たちに分けられますが、末の娘は他より多くもらえます。
なお息子は何ももらえない家庭が多いといわれています。
男性は畑仕事をし、女性は家事を行います。
男性の身分が下のように思われますが、実は家庭内の決定権は男性にあり、家の長は男性になります。
チャム族の民族衣装
引用元:http://image.vovworld.vn
チャム族の民族衣装は機織りの技術の高さだけではなく、文化や宗教を象徴しています。
チャム族の女性の長い上着はア・カメイ・カムと呼ばれ、
シフォンやレースやベルベットなどで作られています。
長い服には両脇にスリットがなく、襟は丸型かハート型になっていて可愛いですね。
チャム族の女性にとって、スリットが入らない長い衣装は魅力的なんです!
女性の伝統衣装は、長い上着とスカートとスカーフがセットになっています。
女性はスカーフを巻いて頭を隠しているのは、ムスリムの掟を守っているからです。
また、目的に応じて着る服が違います。
毎日、着る服はア・カウといわれ、お祝いの日にに着る服はア・サフと呼ばれています。
昔は長い服を様々な色の7枚の布を縫い合わせていたものでした。
これは主に仕事着に使われ、現在も高齢の女性が畑仕事や家事をする時に着ていることが多いです。
チャム族の服装のルール
チャム族の祭りや女性の成人式や結婚式などの大切なイベントには、
女性の美しさを際立たせる素敵な衣装を着ます。
ただ、着る衣装には決まりがあり、
結婚式や祭りには派手な衣装でも構いませんが、
教会に入る場合は白い服でなければなりません。
現在、チャム族の女性の長い衣装は改良され、
デザインなどが微妙に変わり現代化されていますが、使用される色は変わりません。
いつまでも伝統を大事にしている民族なんですね。
チャム族の家
チャム族の家の多くは高床式の住居です。
環境や宗教によって高床式住居の高さが異なります。
高床式住居のメリットは2つ。
①大雨に対応できる。
熱帯地域の東南アジアでは、時々スコールという豪雨が降ります。
川が氾濫し、排水の整備がされていなければ、道はあっという間に洪水になってしまいます。
高床式にして、家の浸水を避けているのですね。
②整地の必要がない。
杭を打ち立てて家屋を建てるので、
山の斜面や海・川の中であろうと地面があるところであれば、どこでも建てることができます。
そのため、メコンデルタ地方では水の上に建つ家を見ることができます。
ぽつんと一軒だけ建っているのではなく、いくつかの家が集まって建てて暮らしているんです。
水上に建つ家の中には、人が住んでいる家と、仕事場として家を建てているケースがあります。
水上で暮らしていますが、学校・コンビニ・ガソリンスタンドなどもあり想像しているよりも発展した暮らしをしているんですよ!
チャム族が抱える社会問題として、
水上で暮らす人々の多くは住所を持たせてもらえないので、
身分証明ができません。
そのため不利益になることも多いのです。
しかし、かつての木製の高床式の家は大きな建物になり、
村の道路もコンクリート化するところも増え
徐々にチャム族の暮らしに変化がみられています。
チャム族の宗教は?
チャム族はベトナムで唯一、イスラム教の信仰をもつ民族です。
カンボジアのチャム族の約85%はイスラム教徒といわれています。
イスラム教徒にとって、ラマダンは聖なる月とされています。
この月は、日の出前から日没にかけて、15歳以上の成人は、一切の飲食を断ちます。
これは、空腹による苦しい体験を分かち合うことで、
飢えてる人や平等への考えを育むことを目的としています。
また、断食中は、飲食を断つだけでなく、けんかや悪口などのトラブルを起こさず、
喫煙や性交渉などの欲も断つことにより、自身を清めてイスラム教の信仰心を強めます。
なお、チャム族は住む場所によって宗教や文化が違います。
ベトナムのチャム族のほとんどが仏教徒で、
2世紀末にベトナム中部の海岸沿いにチャンパ王国を建て,ヒンドゥー教や仏教を信仰していたため今も仏教徒が多いといわれています。
チャム族の食事・料理
チャム族が作る料理はほとんどがベトナム料理です。
中国やフランス文化の影響を受けており、あまりクセがなく、マイルドな味付けとなっています。
フランス文化が影響しているのは、一時期チャム族の住む土地がフランスの植民地になっていたからです。
ベトナムの麺類は基本的にライスヌードルです。
小麦粉の麺や春雨もよく食べられています。
米飯とおかず、汁物が食卓に並びますが、朝食はフォーやお粥も人気です。
チャム族の伝統食はパンケーキで、他の民族が作るパンケーキの作り方や焼き方が違います。
チャム族の女性のほとんどが幼いころから作り方を覚えます。
★作り方★
①米粉でパンケーキのタネを作り
②熱したオーブンを使い約3時間程寝かせ、
③少量のココナッツミルクと水、塩、砂糖、タピオカ粉を加えて
④トットノットと呼ばれるヤシの水分を加え
⑤ココナッツの水分とゴマを加えて、パンケーキの型に入れて焼く。
焼きあがったら、ココナッツミルクとゴマと一緒に食べます。
チャム族にとってこのパンケーキが伝統を象徴するもので、チャム族の魂を表現しているといわれています。
伝統食は他にも、魚を発酵させた調味料兼食材のマム・カーがあります。
こちらは主に麺料理のスープにしたり、鍋に活用してます。
もともと栄養のある土や水が豊富な土地なので、食料がたくさんありました。
この発酵食材も食料危機のためではなく、捨てるのがもったいないために生まれた保存方法といわれています。
チャム族の音楽
引用元:http://partner.tea-nifty.com/prj/2017/06/16-3c78.html
かつて栄えていたチャンパ国から伝わる祭りや歌、舞踊などでチャム族の楽器は欠かせません。
チャム族の楽器は主に、ギーナン太鼓やパラヌン太鼓、サラナイトランペットなどがあります。
そして、チャム族の祭りではパラヌン太鼓が主役の楽器になります。
この太鼓は丸型で、表面には革が絡み合った紐を張っています。
パラヌン太鼓を手で打ち、サラナイトランペットやギーナン太鼓と演奏をします。
チャム族は、パラヌン太鼓とサラナイトランペット、及びギーナン太鼓の3つは人間をイメージしているといわれています。
サラナイトランペットは唇、パラヌン太鼓はお腹、ギーナン太鼓は2つの膝をイメージしたものです。
ちなみに、3つの楽器は祭りで演奏されている一方、サラナイトランペットは葬式でも演奏されます。
日本古代音楽の一つで林邑楽(りんゆうがく)という音楽があります。
チャンパ王国から日本に伝わった音楽と舞踊で,奈良時代より寺院の供養や朝廷の儀式の音楽として使用されていました。
平安時代に入り徐々に日本の音楽に影響し変化していったといわれています。
チャム族の織物・民芸品
チャム族には、素焼きの壺と 手織りの布の伝統的な民芸品があります。
素焼きの壺づくりはほぼ女性が行っているんですよ!
壺を作った初代の女性から女性が作り方を引き継いでいるのです。
また、チャム族の女性が織る、サンポットホールと呼ばれる伝統的な絣(かすり)があります。
絣とは織物の技法の一つで、絣糸(かすりいと)、すなわち前もって染め分けた糸を経糸(たていと)、緯糸(よこいと、ぬきいと)、またはその両方に使用して織り上げ、文様を表すものである。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%A3
鮮やかな彩りが魅力で、花の模様や格子状の幾何学模様などの模様が織り込まれており、
素朴さだけでなく気品を感じる絣布です。
サンポットホールは主に腰巻として使用される織物ですが、
他にも家具のクロスやカバーに使用しインテリアのアクセントや
竹材などにかけてタペストリーなど様々な使い方をしています。
チャムのムスリムの女性たちはサンポットホール以外にも、
ムスリムのための木綿とシルクの混織のサローン(腰布)を織り、
それを同じイスラム教徒にも、ムスリムの商人を通じて販売しています。